療法食価格は不適切?アメリカで訴訟!一般のフードと療養食を比較
猫や犬が尿路結石や腎臓病などの様々な病気にかかった時、動物病院で勧められる療法食。
当然療法食として販売されるペットフードの価格は高く、治療費と共に飼い主の負担がぐっと増えます。
そのペットフードの価格が適正でないとしたら?
2017年アメリカで、療法食(処方食)とその他のペットフードとの違いが価格だけではないかと、集団訴訟が起きました。
こちらのページでは、アメリカで起こったペットフードの処方食(療法食)への集団訴訟内容と、訴えられているメーカーの療法食と一般食の違いを比較していきます。
なぜ訴訟が起こされたのか?ペットフード業界の裏側が見えてきます。
処方箋ペットフード集団訴訟内容
消費者が処方箋ペットフードに騙されているとして、アメリカの4つの州で起こった集団訴訟。
- ヒルズ プリスクリプションダイエット
HIll’s Prescripsion Diet - ピュリナ プロプラン療法食
Purina Pro Plan Veterinary Diets - ロイヤルカナン 療法食 ベッツプラン
Royal Canin Veterinary Diet - アイムス 療法食
Iams Veterinary Formula
- 病気を治療する為の薬成分などが一切含まれないのに、処方箋ペットフードとして価格を上げて販売し、消費者に不必要な負担を強いていること。
- ロイヤルカナンとアイムスを製造しているマースペットケアは、全米でチェーン展開する動物病院、ブルーパールベッドホスピタルを所有し、さらに全米最大大手のペット用品販売小売店ペットスマートのパートナー企業であることから、価格協定を行っていると考えられること。
一般のペットフードと配合率を調整しただけで、特に効果のある成分が加えられていない商品を、獣医師が処方箋を書き、また獣医師の指導が必要というだけの理由で不当に高く消費者に販売している、ことが問題だということです。
次の項目で、各メインブランドのアダルトと療法食で比較してみましょう。
訴訟を起こされたペットフードのアダルトと療法食の材料比較
訴訟を起こされたメインブランドのうち、日本でサイトを持ち販売されていますのは、ヒルズ、ピュリナ、ロイヤルカナンの3社の療法食となります。
なお、我が家の猫の一匹が腎臓病でしたので、成猫用と腎臓病用を比較します。
表を見る時のポイント
表で材料を確認して頂くとき、以下のポイントについて見ていかれますと、集団で訴訟が起こされた背景が見えてきます。
- 表示されている材料に、「家禽ミート(肉類)」、「エキス」、「動物性油脂」など、子供が食べ物として認識できない材料が含まれていないか?
- アレルギーの原因となっている穀物が増量目的で配合されていないか?
- 酸化防止剤に発がん性がある「BHA」や「没食子酸プロピル(もっしょくしさんプロピル)が使用されていないか?
これにより、療養食が必要となった原因が見えてきます。
ただ、表示されている原材料が本当に使用されているかは、知るすべはありません。
記載された材料のDNAが検出されない
イギリスのノッティンガム大学で、17種類のペットフードに含まれるDNA調査が行われています。その結果、17種類のうち14種類でラベルの記載とは違う肉が材料に使われていることがわかりました。
そしてその14種類のうちの一つがヒルズの療法食になり、トリ肉(注:”鶏肉”ではない)が記載されていましたが、チキンのDNAは一切検出されていません。(代わりに豚のDNAが検出されています)
発表元
>> Acta Veterinaria Scandinavica
腎臓が悪くなったということは、体にとって不必要な物質を排出できなくなっているということ。
(逆に言いますと、蓄積していくということ)
そのため、「健康に害の無い範囲でしか使用していない」と言ったことは通用しません。
腎臓病の療法食は肉の割合が減少
ピュリナ以外の2社は、療法食になりますと穀物の量が多くなっています。これは、腎不全の場合にはたんぱく質を制限する必要があるからです。
ですが腎臓が悪くなったということは、今まで腎臓に負担のかかる生活をしてきた為に、処理機能の限界を超えたということを指します。
- 本来肉食の猫が、穀物を主体としなければ生きられない、というのはどういうことなのでしょうか?
- 肉類の安全性は?
それらいくつかの視点からキャットフードを見ていきますと、飼い主自身が、普段から原材料を把握することの大切さに気付かれると思います。
また、訴訟となった理由、それぞれの病気に効果のあると言われる薬剤や、特別な材料が使用されているかもチェックしてみて下さい。
なお、それぞれ独自に配合されている材料は赤色で、共通する材料は黒字で表示しています。
では見ていきましょう。
ヒルズ(Hill’s)の総合栄養食と療法食の材料比較
アダルト チキン |
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トリ肉(チキン、ターキー)、小麦、動物性油脂、トウモロコシ、コーングルテン、米、ポークエキス、ビートパルプ、魚油、ミネラル類(ナトリウム、カリウム、クロライド、銅、鉄、マンガン、セレン、亜鉛、ヨウ素)、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、ベータカロテン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、コリン)、アミノ酸類(タウリン、メチオニン、リジン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物) |
Prescription Diet k/d(腎臓病の猫用) |
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米、コーングルテン、動物性油脂、トリ肉、全卵、チキンエキス、魚油、セルロース、ビートパルプ、植物性油脂、ミネラル類(カルシウム、ナトリウム、カリウム、クロライド、マグネシウム、銅、鉄、マンガン、セレン、亜鉛、ヨウ素)、アミノ酸類(タウリン、トリプトファン、メチオニン、リジン)、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、ベータカロテン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、コリン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物) |
- マグネシウムは、腎臓病に効果があると言われています。
- トリプトファンはアミノ酸です。肉や魚、大豆などから取ることができますが、穀物を主にしていることから不足し、添加されているようです。
ピュリナ(Purina)の総合栄養食と療法食の材料比較
ピュリナ ワン サーモン |
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サーモン、米、コーングルテンミール、家禽ミール、とうもろこし、大豆ミール、油脂類(牛脂、大豆油)、酵母、ツナミール、フィッシュパウダー、たんぱく加水分解物、ミネラル類(カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロライド、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレン)、ピロリン酸ナトリウム、ビタミン類(A、D、E、K、B1、B2、パントテン酸、ナイアシン、B6、葉酸、ビオチン、B12、コリン)、カラメル色素、アミノ酸類(リジン、タウリン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール) |
Pro Plan Optirenal(腎臓病の猫用) |
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サーモン、ツナ、コーングルテンミール、小麦、チキン、動物性油脂、大麦、チコリ、とうもろこし、大豆ミール、魚油、たんぱく加水分解物、オーツ麦、ミックスエキストラクト、ミネラル類(カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロライド、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレン)、ビタミン類(A、E、B1、B2、パントテン酸、ナイアシン、B6、葉酸、B12、コリン、K、ビオチン、C、ベータカロテン)、アミノ酸類(アルギニン、メチオニン、タウリン)、ピロリン酸Na、酸化防止剤(ミックストコフェロール) |
- マグネシウムとメチオニンは、腎臓病に効果があると言われています。
- ベータカロテンはビタミンAに生成されるのですが、猫は酵素を持たないのでできません。??
- アルギニンは、肉類に多く含まれます。肉の配合量が少ないために添加しているようです。
ロイヤルカナン(ROYAL CANIN)の総合栄養食と療法食の材料比較
ロイヤルカナン FHN(フィーライン ヘルス ニュートリション) インドア |
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肉類(鶏、七面鳥)、米、小麦、とうもろこし、植物性分離タンパク*、動物性脂肪、加水分解タンパク(鶏、七面鳥)、小麦粉、植物性繊維、ビートパルプ、酵母および酵母エキス、大豆油、フラクトオリゴ糖、魚油、サイリウム、アミノ酸類(DL-メチオニン、タウリン、L-カルニチン)、ゼオライト、ミネラル類(Ca、Cl、Na、K、Zn、Mn、Fe、Cu、I、Se)、ビタミン類(A、コリン、D3、E、C、ナイアシン、B2、パントテン酸カルシウム、B1、B6、葉酸、ビオチン、B12)、酸化防止剤(BHA、没食子酸プロピル) |
腎臓サポート ドライ(慢性腎臓病の猫用) |
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コーンフラワー、米、動物性油脂、超高消化性小麦タンパク、大豆分離タンパク、植物性繊維、コーン、コーングルテン、加水分解動物性タンパク、チコリーパルプ、肉類(鶏、七面鳥)、魚油、大豆油、フラクトオリゴ糖、サイリウム、マリーゴールドエキス、アミノ酸類(L-アルギニン、DL-メチオニン、タウリン、L-リジン)、ゼオライト、ミネラル類(K、Cl、Ca、Na、Mg、Zn、Mn、Fe、Cu、I、Se、クエン酸カリウム)、ビタミン類(A、コリン、D3、E、C、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、B2、B6、B1、葉酸、ビオチン、B12)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)、酸化防止剤(BHA、没食子酸プロピル) |
- マグネシウムとクエン酸カリウムは、腎臓病に効果があると言われています。
- アルギニンは、肉類に多く含まれます。肉の配合量が少ないために添加しているようです。
- マリーゴールドのオイルは、鎮静効果、消炎、美肌効果があるようですが、腎臓病には効果はありません。
- 乳化剤は不必要です。
療法食には薬成分は配合されず
療法食と一般の総合栄養食とを比較してみた結果、病気への配慮がされていることはわかりました。
ただ、腎臓病に効果のあると言われる薬成分については確かに配合されてはいないようです。
それは今まで治療薬が無かったこともあるのでしょうが、他の療法食についても薬成分は配合されていません。
東レ、猫の腎臓病治療薬を開発 国が承認 (2017年1月23日付)
東レは23日、猫の死因のトップとされる慢性腎臓病の治療薬を開発し、農林水産省から承認を取得したと発表した。腎機能低下を抑制する猫用の治療薬は世界初という。4月から動物医薬品大手の共立製薬(東京・千代田)が販売する。慢性腎臓病は10歳以上の高齢猫の半数以上が発症するとされ、治療薬が待ち望まれていた。
引用元:日本経済新聞
そして特に効果のある、または高価な材料が使われているわけでは無い療法食は、当然日本でもアメリカと同様の方法で、動物病院で総合栄養食よりも高い値段で販売されてきました。
獣医師の指示に従う=動物病院で購入しなければならない?
かつて療法食は薬と同様に、動物病院で購入するのが普通でした。(我が家でもそうしました。)
ですがインターネット上で療法食が購入できるようになってから随分経ち、現在では動物病院で療法食を食べるように指示を受けた飼い主が、ネットで療法食を安く購入することが多くなりました。
そのため動物病院では療法食があまり売れなくなり、中には倒産にまで追い込まれた動物病院があったようです。
- ”獣医師の指示に従って”与えなければならない療法食を安価に販売するのはおかしい
- 間違った与え方をすると健康を害する危険性がある
とする(獣医師側の)意見もありますが、療法食は、獣医師の指示に従い、指示通りの療法食を指示された期間与えれば良いだけで、動物病院で購入しなければならないという決まりはありません。
ヒルズのサイトで確認してみましょう。
プリスクリプション・ダイエットは病気のペットの回復・生体機能の正常化を助けるために臨床栄養学をもとに開発された特別療法食です。
病気の時こそ、食事管理が重要。元気を取り戻すための食事です。
※獣医師の指示にしたがって与えてください。ヒルズのプリスクリプション・ダイエットを与えている間は、定期的に獣医師の診察をお受け下さい。
引用:プリクション・ダイエット 日本ヒルズ・コルゲート株式会社
どこにも「動物病院で購入してください」とは書いてありません。
これは人間に置き換えますとごく当たり前のことです。
体に何か不都合が起き、病院で食事指導された場合、食材は病院ではなくお店で購入しますよね?
飼い主が動物病院でペットフードを買わないことが問題なのではなく、獣医師が食事指導をする際、製品として出来上がっているペットフードしか勧めることしかできない方が問題なのだと思います。
アメリカの弁護士が問題としているのはペットフード業界の闇
立場が違えば見方も違います。
獣医師がそれぞれの病気に対してベストだと思う処方箋を書き、それを基にベストな製品をペットフードメーカーが作り、獣医師が病状に合ったペットフードを飼い主に販売する。
それであれば一般的なペットフードよりも割高となるのも仕方が無いのでは?と。
しかし今回の訴訟は、幾たびも行われているペットフードに関する訴訟のうちの一つです。
彼らが問題としているのは、アメリカ合衆国の政府機関であるFDA(アメリカ食品医薬品局)が、ペットフードを販売する大手企業に対し、度々違法な成分を含むことや、病気を治療することができると主張することを許していることにあります。
訴訟詳細
>> Walkup, Melodia, Kelly & Schoenberger
今回の訴訟は、大きな流れのうちの一つだということです。
まずはキャットフードを選ぶとき、飼い主であるあなたが、あなたご自身で大事な猫のために原材料をよく確認なさって下さい。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。少しでも長くあなたの猫があなたと一緒にいられますように。